ドイツ・フランス・スペインが合同で製作した映画「パフューム ある人殺しの物語」は、パトリック・ジュースキントが手掛けた原作をもとに作られた作品です。
サイコサスペンスということで、劇中には残酷な描写もありますが、映画自体はスペインで撮影され、のどかな風景を見るのも楽しみ方のひとつです。
今回は本作の魅力についてご紹介していきます。
※12歳未満の方の観賞には注意が必要です。
映画「パフューム ある人殺しの物語」あらすじ
時は18世紀フランス。ヨーロッパ最大の都であるパリは悪臭がひどく、特にひどかった魚市場でジャン・バティスト・グルヌイユは産み落とされました。
孤児院に引き取られた彼は5歳になっても口をきくことはなく、しかし、数キロ先の匂いを感じ取れるほどの驚異的な嗅覚を持っていました。
13歳になった彼は身を売られ、1日16時間の労働をさせられます。
この仕事は過酷なあまり、せいぜい5年で死んでしまう人がほとんどでしたが、グルウイユはまだ知らぬ香りを夢見て生存したのでした。
ある日、彼は仕事で訪れた街で魅力的な匂いをまとう女性に出会います。
彼は夢中になって女性に近づき匂いを嗅ぎますが、誤って女性を殺してしまいました。
彼女の匂いは失われてしまったため、グルヌイユは人気調香師だったバルディーニのもとに弟子入りし、その女性の匂いの再現と匂いを保存する方法を学び始めました。
ところが、バルディーニの持つ技術「蒸留法」では匂いを保存することはできません。
そこでグルヌイユは、香水の製造で有名な街グレースに行き、「冷侵法」を学び始めます。
同じ頃、グレースでは若い女性の連続殺人が相次いでいて・・・。
映画「パフューム ある人殺しの物語」の見どころ①グルヌイユの驚くべき才能
グルヌイユは人間的な部分が欠落している反面、優れた嗅覚と匂いへの執着で驚くべき才能を発揮します。
例えば、調香師のバルディーニのブティックは、昔は賑わっておりましたが、その人気は地に落ち、流行っている香水「愛と精霊」を嗅いで研究していました。
そこに材料の配達にやってきたグルヌイユは、バルディーニについた「愛と精霊」の匂いに顔をしかめ、「ひどい香水だ」と言います。
そして、工房にあった香料を机に並べ、これらがその成分であると言い張るのです。
バルディーニが半信半疑で作らせると、それは紛いもなく「愛と精霊」でした。
グルヌイユはさらに良い香りが作れると言うのでバルディーニは作らせました。
その香りを嗅ぐと花の咲いた庭園で美女にキスをされているような感覚に浸れたバルディーニは、彼を雇うことを決めるのです。
グルヌイユの考えた香水はどれも大評判で、バルディーニのブティックは瞬く間に人気が回復しました。
さらにグルヌイユは、1000通りの香水のレシピを考えることも朝飯前だということで、彼の底知れない才能がうかがえます。
映画「パフューム ある人殺しの物語」の見どころ②サスペンス要素を盛り込んだシーンの数々
グレースに辿り着いたグルヌイユはそこで「冷侵法」を学び、手を出してはいけない香水作りに手をつけてしまいます。
それは、彼がいつまでも忘れられないあの女性の匂いを再現するために、若い女性を殺し、皮膚や髪の毛の匂いを抽出するというものです。
グルヌイユは暗がりから女性を襲うのですが、黒い髪の彼はどこにいるか分からず、見ている側もゾクゾクするシーンが多く見受けられます。
これは監督のトム・ティクヴァが「明確に暗い美学をこの物語は持っている」としているとしているからであり、その不気味さが映画に表れています。
さて、グルヌイユはバルディーニに「香水は13種の香りから成る物」と教わったため、12人までを殺害し、香りを抽出しました。
ところがもうその頃になるとグレース中は厳戒態勢で、グルヌイユがもともと目をつけていた街一番の美人であるローラは、父のリシに連れられ遠く離れた宿に泊まっていました。
しかし、グルヌイユの嗅覚は確実に彼女を捉え、殺し、匂いを抽出してしまいました。
こうしてグルヌイユは究極の香水を完成させたのです。
それと同時に、彼は警察に捉えられてしまいました。
映画「パフューム ある人殺しの物語」の見どころ③グルヌイユを待ち受ける衝撃の結末
リシはグルヌイユに「何故娘を殺したのか」と問うと、彼は「必要だったから」としか答えなかったので何度も水責めにかけました。
そして、群衆の前で処刑すると言い放ったのです。
処刑の当日、グルヌイユは処刑用の正装に着替え、究極の香水を自身につけました。
そうして彼が人々の前に立つと、誰もがその匂いに魅了されます。
それを見たグルヌイユは香水をハンカチにつけ、匂いを播くように振り回し、最後には風に乗せて飛ばします。
人々は夢中になってそれを追い、周辺の人に対して愛情を感じるまでに至るのです。
そして、身近な人同士で愛し合い、その姿を見たグルヌイユの脳裏を過ぎったのは、初めに出会ったあの女性でした。
彼はその女性と愛し合う自身を想像し、涙を流します。
怒っていたリシまでもが彼のその香りに平伏し、「許してくれ」「我が息子よ」と謝罪したのでした。
この究極の香水は群衆をコントロールし、グルヌイユが望めば世界をも支配することができましたが、彼は興味がありませんでした。
処刑場を後にしたグルヌイユはまるで夢遊病患者のように放浪し、匂いに導かれるまま生まれ故郷のパリへと辿り着きます。
残った香水の全てを頭からかぶると、周囲の視線が一斉にグルヌイユに向き、彼を天使だと思った人々は彼の骨すらも食べ尽くしてしまいました。
グルヌイユは孤児院で育ったため、人間らしい感覚が欠如しています。
そのため、彼が初めに会った女性の匂いではなく、彼女自体に好意のようなものを抱いていたとしても気付かなかったのではないでしょうか。
彼は、女性を何度も思い出し彼女を思って泣くくらい失ったことを悔やんでいます。
もしも女性と恋に落ちていたら、この物語の結末は変わっていたのかもしれません。
映画「パフューム ある人殺しの物語」おわりに
「パフューム ある人殺しの物語」は、究極の香水を追い求めた主人公のサイコサスペンスです。
彼の作り上げた香水は人々に愛を与えた一方、彼は愛も知らないまま命を落としてしまいます。
そのセンチメンタルな部分に、終盤まで彼を敬遠していた方もなにかしら感じ取っていただけるのではないでしょうか。
見る度に深みを味わえる映画でもありますので、機会があれば繰り返し見てみてくださいね。