木こりと新人映画監督の心の交流を描いたヒューマンドラマ映画「キツツキと雨」

木こりと新人映画監督の心の交流を描いたヒューマンドラマ映画「キツツキと雨」

キツツキと雨

 

人の本質的なものにフォーカスしたヒューマンドラマは、現実離れした話とは違い、私たちの日常に近しいものを感じますよね。

主人公を始めとする登場人物に共感し、応援したり、ときにはその人物になりきってスクリーンを駆け巡ってみたり。

今回は数あるヒューマンドラマの中でも岐阜県の山中を舞台とした、ある木こりと新人映画監督の心の交流を描いた沖田修一監督の映画「キツツキと雨」をご紹介します。

主演の役所広司さんのキラリと光る演技にもご注目ください。

 

 

映画「キツツキと雨」・あらすじ

 

岸克彦(役所広司)は還暦を迎えたベテランの木こり。
ある日、東京からやってきたゾンビ映画の撮影隊が立ち往生しているところに出会し、助けてあげたことから映画の撮影に巻き込まれてしまいます。

そんな中、克彦の目に付いたのは頼りない若いスタッフの田辺幸一(小栗旬)で、彼は忙しなく動くスタッフとは対照的で、ひとり呆けて突っ立っているだけ。

そんな幸一を自身の息子であり最近職を失った浩一(高良健吾)と重ね、克彦は苛立ちを覚えます。

しかしながら、実は幸一は新人映画監督で、場をまとめる側だったのです。

幸一の脚本を読んだ克彦は感銘を受け、また、映画の過酷な撮影現場を目の当たりにしたあとは、彼を応援するようになり、嫌々協力していた映画の撮影にも積極的に参加するようになっていきます。
脚本に興味を示して向き合ってくれた克彦が撮影現場に現れるようになると、幸一は自信を持てるようになり、一度は逃げ出そうとした撮影にも真摯に取り組むようになっていきます。

克彦の協力もあって撮影は村中を巻き込むまでに発展します。

撮影が順風満帆に進んでいたころ、克彦は間近に迫る妻の三回忌をすっかり忘れてしまい・・・。

 

映画の見どころ①主人公克彦のキャラ

 

この映画の見どころはなんといっても役所広司さん扮する克彦という人物にあるのではないでしょうか。

克彦は3年前に妻に先立たれ、職を失った浩一と二人暮らし。堅実に仕事と家事をこなす彼は、なにもしようとしない浩一を見ると腹を立て、浩一の仕事探しのことになると取っ組み合いの喧嘩をするほどでした。

そんな日々を送っていた克彦にとって、映画の撮影は気を紛らわせてくれるだけでなく新鮮味もあり、自らも撮影に参加したことからその魅力に引き込まれていきます。

気難しそうな人柄に見えて、気弱ながら仕事を頑張る幸一になにかと世話を焼く優しい一面も。

書いた幸一本人すら自信を持てない脚本にも興味を示し、読んだあとは「面白かった」「ちょっと泣いた」と本人を激励します。

「監督の椅子には恥ずかしくて座れない」と言う幸一に、お手製の椅子をプレゼントしてしまうほど。

ここまでくると「あれ、このお父さん、なんだか可愛い」と思ってしまう人も多いのではないのでしょうか。

 

 

映画のみどころ②二人の「こういち」の成長

 

この映画には二人の「こういち」が登場しますが、それぞれが劇中で成長を遂げる姿にも注目です。

まず、新人映画監督である幸一は、ベテランの助監督や俳優陣に囲まれ、詰め寄られるとお腹を痛めるほどに気が弱く、初めは「お飾り監督」と言っても過言ではありませんでした。

しかし、気軽に話しかけてくる克彦と交流していくうちに徐々に心を開き始め、積極的にメガホンを取るようになります。

実家は山形の旅館を経営しているため、後継もせずに映画監督をやっている自身を省み、父に負い目を感じている彼に「お父さんは嬉しくてしょうがないだろうなあ」と投げかけた克彦の言葉が、彼をさらに後押ししたのではないでしょうか。

最後の方では、克彦から貰った椅子に腰掛け、次回作の撮影を行っている幸一の姿も見られますよ。

続いて、克彦の息子である浩一はというと、仕事もせずにだらだらと過ごす日々を送っていました。

雨が降っても洗濯物を取り込むこともせずに、克彦と喧嘩になってしまいます。

そんな日々に嫌気がさしたのか、ある日突然「出て行く」と言い出し、カッとなった克彦も「出て行け」とここでも喧嘩をしてしまいます。

しかし、映画の撮影に気を取られ妻の三回忌を忘れていた克彦に代わり、家の掃除から当日着る喪服までを彼一人で準備していたのです。

それを目の当たりにした克彦は、三回忌の酒席で無職の浩一をつつく親戚に対して「(浩一の)気持ちもあるやろ」と激怒します。

浩一は父の本心に心を動かされたのか、映画の最後では一緒に朝食を取り、父と共に林業に勤しもうとする姿が映されているのでした。

 

 

映画のみどころ③ゆるやかな世界観

 

沖田修一監督の映画といえば、私たちが過ごしているような日常を切り取っているかのようなゆるやかさが特徴的です。

克彦の林業仲間が映画に出演した彼を茶化すシーンも、度々登場する食事のシーンも、東京から来た有名な俳優を見て盛り上がる村人のシーンも、これといって特別なことはありませんが私たちにも起こり得る出来事であり、親近感を覚えます。

これらとお茶目なキャラクターが相まって、大笑いとはいかないもののクスリとなる場面が多くあり、映画を見終わったあとはどこか温かい気持ちになれるのです。

エンディングに流れる星野源さんの「フィルム」は、キツツキと雨の世界観を引き継ぐようなゆるやかさと優しさで、これまたほっと息抜きが出来るような曲となっています。

ちなみにこの曲のミュージックビデオには、キツツキと雨に出てきたようなゾンビたちが登場します。

それもそのはず、メガホンを取ったのは沖田監督だったのです。そのため、こちらも合わせて確認すると、より楽しめますよ。

 

 

映画「キツツキと雨」・まとめ

 

映画「キツツキと雨」の魅力は、沖田修一監督が生み出す独特な世界観や役所広司さんや小栗旬さんの扮する登場人物たちのキャラクター性にあります。

これらは私たちがもしかしたら体験しているかもしれないようなありふれた日常の一角であり、故に親近感を覚えるのです。

また、この映画は、東日本大震災が起こった2011年に撮影が行われており、役所さんは当時のインタビューで『我々にできることは、この作品をお客さまに観ていただき、心からこぼれる笑顔を引き出すこと』と残しております。

その言葉通りとても心地良い余韻に包まれ、笑顔になれる作品だと言えるのではないでしょうか。

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