樹木希林さん主演の心あたたまるヒューマンドラマ「あん」

樹木希林さん主演の心あたたまるヒューマンドラマ「あん」

あん

個性的且つ確かな演技力で数々の作品に存在感を残す樹木希林さん。

出演作は数知れず、日本の名女優として名を連ねています。

そんな樹木希林さんが主演を勤めた映画「あん」は、病気を患いつつも後世を明るく生きようとする老女が輝かしく映し出されています。

メガホンを取った河瀬直美監督の美しい自然にフォーカスされた映像美も圧巻です。

この作品はカンヌ国際映画祭でオープニング上映され、トロント国際映画祭では各種俳優賞を受賞しています。

映画「あん」のあらすじ

どら焼き屋「どら春」で雇われ店長をしている千太郎(永瀬正敏)は、一人でお店を切り盛りしていました。

桜が満開の春の陽気に包まれたある日、千太郎のお店に、一人の老女がやって来ました。

彼女は吉井徳江(樹木希林)といい、お店の外に貼り出された「アルバイト募集」の紙を見て、働かせて欲しいと頼んでくるのです。

彼女はどう見ても高齢でしたので、千太郎は「力仕事も多いどら焼き店は厳しい」と彼女に告げるとどら焼きを持たせて帰ってもらいました。

ところがその日の午後、再び徳江さんがやって来て、こう言うのです。

「皮はいいけど餡がちょっとねえ・・・」彼女は自身がこしらえたという餡の入ったタッパーを千太郎に押し付けると「食べてみて」と言い帰っていきました。

千太郎は雇われ店長ではありますが今までどら焼きを作ってきたため少なからずプライドがあります。

徳江さんの行動が頭にきたのかタッパーをゴミ箱に捨ててしまいました。

それから彼は少し考えてタッパーを拾い上げると、餡を試食してみるのです。

それはどら春で使用していた餡とは比べものにならないくらい美味しく、彼は何度も味見をしました。

そして、どら春の常連である中学生のワカナ(内田伽羅)に、その餡について語ると彼女は「働かせてあげたら?」と提案するのです。

桜が散り始めた頃、また徳江さんが訪ねて来ました。

千太郎は徳江さんを見ると深々と頭を下げて、働いてもらえないかたずねます。

徳江さんは嬉しそうに了承し、彼女のアルバイト生活が始まるのでした。

映画「あん」の見どころ①どら春のどら焼きは徳江さんの餡で大評判に

どら春のどら焼きは良くも悪くも普通のどら焼きでした。

客足はまばらで、暇そうにたばこをふかす千太郎の姿が度々見受けられます。

ところが徳江さんが来たことでそれは一変します。

どら春で使われている餡に問題があるということを見抜いた徳江さんが千太郎にたずねると、市販の餡を使っているとのこと。

そこで徳江さんは日も登っていない早朝にお店に集合するよう千太郎に提案します。

千太郎は渋々了承し、二人は翌日早朝から餡の仕込みを始めます。

丁寧に小豆を選別し、銅鍋で時間をかけて茹でて、ざるで一度冷やして水飴と茹でる・・・。

そんな手間隙のかかる作業を経て、開店時間の直前に出来上がった餡を焼き上がった皮で包み、千太郎は試食をします。

彼は目を輝かせ、それをあっという間に平らげたあとこう言うのです。

「どら焼きをまるまる一個食べたのは初めてです」

徳江さんの餡が評価されたのか、どら春には日に日に人が集まり、とうとう開店前に行列ができるようになるまでに至ります。

さらに、徳江さんの朗らかな人柄は千太郎をやお客さん、ワカナを始めとする中学生たちを和ませます。

彼女の周りは常に笑顔が溢れているのです。

また、徳江さんは餡を作る時だけは厳しく千太郎を指導しましたが、その熱心な姿勢に彼は敬意を持っているかのように優しく接するのでした。

映画「あん」のみどころ②姿を消した徳江さん

千太郎は徳江さんの指が変形していることに気付いていましたが、特に気にすることもなく彼女との日々を大切に過ごしていました。

ところが、ある夏の晩にどら春のオーナーがやってきて、千太郎に詰め寄ります。

「ここで働いている徳江さん、らい(ハンセン病)らしいわ。うつったら困る。お客さんにも知られるかもしれない」

そして彼女に辞めてもらうように迫るのです。

さらにワカナはどら春で働く徳江さんのことを何気なく母に話すと、お喋りなワカナの母は噂を広め、どら春は再びお客さんが来なくなってしまいました。

寂しそうに店内を掃除する徳江さんを見た千太郎は帰宅するように促します。

徳江さんは悲しそうに笑い、この日以降お店に来なくなってしまったのです。

秋になって徳江さんから千太郎のもとに手紙が届きます。

自身がハンセン病であることやどら春で千太郎とどら焼きが作れて幸せだったこと、自身が差別を受けたことで迷惑をかけたことへの謝罪などが書かれており、彼女を守れなかったことを悔いる千太郎は、よくお店を閉めるようになり酒浸りになります。

そんなときにやって来たワカナが徳江さんに会いに行くことを提案しました。

映画「あん」のみどころ③千太郎を肯定し続けた徳江さん

千太郎とワカナが徳江さんに会いに行くと彼女は喜び、仲間たちと共同で切り盛りする食堂で二人にぜんざいを振る舞いました。

徳江さんの友人は、彼女は和菓子職人で腕はただものでは無かったことを明かし、千太郎とワカナはその味に浸りました。

そのとき徳江さんは

「どら春からの景色は桜が綺麗でした。ありがとうね」

と千太郎に言うので、彼は涙をこぼします。

徳江さんは母親のようにそれを見守り、「店長さん美味しい時には笑うものよ」と微笑みました。

冬に千太郎は徳江さんに手紙を送ります。

その内容は過去に泥酔して暴力事件を起こし、出所後更生するためにどら春を切り盛りしていた、というものでした。

そんなどら春もオーナーの甥が新しくお好み焼き屋を始めたいと言ってくるので、千太郎を悩ませます。

そこへ現れたワカナは、徳江さんに会いに行くことを提案します。二人は再び徳江さんのもとへ向かいました。

しかし、彼女は三日前に持病が悪化して息を引き取っていたのです。

唖然とする二人に徳江さんの友人は二人に音声メッセージを聞かせます。

「もし自分に子どもがいたら千太郎くらいの歳になっていた。孤独な千太郎を放っておけなかった。私たちは生きるために生まれてきたから、何かになれずとも生きる意味があるのよ」

そうして徳江さんが長年使い続けたざるや木べらが千太郎に渡されます。

千太郎は徳江さんの優しさにたくさん涙を流しました。

時は流れ桜が満開の季節。

どら春の雇われ店長を辞めた千太郎が公園でどら焼きを販売しています。

「どら焼きいかがですか」と道行く人々に呼びかける声ははつらつとしていて、以前のような翳った表情はなく晴れ晴れしていました。

一人厳しい表情でどら春を経営していた千太郎は、徳江さんがお店に来るようになってから優しい表情を浮かべるようになります。

二人は血は繋がっていなくともまるで本当に親子のようで、その微笑ましい姿に胸を打たれる方も多いのではないでしょうか。

映画「あん」まとめ

樹木希林さんが主演を務める映画「あん」は、孤独な千太郎と徳江さんのまるで親子のような絆が心に染み渡る素敵な映画です。

是非ハンカチを片手に、本作に触れてみてはいかがでしょうか。

映画(邦画)カテゴリの最新記事